オランダの世界遺産と言われてまず思い浮かぶのが、「アムステルダムの運河」と「キンデルダイクの風車」などのオランダらしい歴史ある景色や風景ではないでしょうか。ちなみにオランダには文化遺産が9つ、自然遺産が1つの計10個の世界遺産が登録されています。
そしてこちらが世界遺産のリストです。
1.スホクラントとその周辺
2.アムステルダムの防塞線
3.キンデルダイク=エルスハウトの風車網*
4.キュラソー島の港町ウィレムスタット市内の歴史地区
5.Ir.D.F.ヴァウダヘマール
6.ベームスター干拓地
7.リートフェルトのシュレーダー邸
8.アムステルダムのシンゲル運河の内側にある17世紀の環状運河地域*
9.ファン・ネレ工場
自然遺産
1.ワッデン海(デンマーク、ドイツと共有)
今回はそんなオランダの世界遺産の中で、「オランダ近代建築史上、そして世界の近代建築史上を飾る代表作のひとつ」「オランダ機能主義建築の最高傑作」とも称される建物Van Nelle Fabriek(ファン・ネレ工場)をご紹介したいと思います。
建築家ル・コルビュジェも賞賛
ファン・ネレ工場は元々、タバコ・コーヒー・紅茶などの嗜好品の製造工場として1925年から1931年に掛けて建設され、1995年まで操業されていた建物。
1985年にはオランダの国家遺産として指定されていましたが、世界遺産として登録されたのは2014年とつい最近の出来事です。それほど日本人に馴染みがないのは、登録されてからまだ日が浅いという理由もあるかもしれませんね。
日本も委員国を務めたドーハでの世界遺産委員会にて、20世紀の優れた産業建築として学ぶべき点が多いなど支持する意見が多数あり、ついに登録が認められました。
このファン・ネレ工場はアムステルダムの運河(正式にはアムステルダムのシンゲル運河の内側にある17世紀の環状運河地域)以来、オランダでは4年ぶりの世界遺産登録となりました。
ファン・ネレ工場の特徴は何と言ってもガラスや鉄といった素材を多く使用し、光をふんだんに建物内に取り込んでいること。そして、工場のシンボルとも言える交差したガラス張りのブリッジでしょう。
この光溢れる工場を、あのフランス人有名建築家ル・コルビュジェも「この場所の晴朗さは完璧なものであり、モダンエイジの創造物はそれまでプロレタリア階級という言葉が帯びていた今までの暗いイメージをすべて拭い去ってくれた」と賞賛しています。その美しく、モダンなデザインは当時の専門家や人々をどれだけ驚かせたかがよくわかります。
オランダでは窓が大きく光を上手く利用した建物をよく目にしますが、その礎ともなるデザインがこのファン・ネレ工場なのかもしれません。

シンボルであるブリッジも工場棟と向かい合う倉庫棟を結ぶための効率的なデザインであり、工場が位置する場所も東に運河、南に鉄道と製造から運送までの流れも計算された実に機能的でオランダらしい造りになっています。

現在建物のスペースは、デザイン・建築事務所としてクリエイティブな人々に利用されたり、アートフェアなどが開催されるイベントスペースとして活用されています。世界遺産を自分のオフィスとして使用できるなんて羨ましい限りです。
昼間の光が差し込む時間帯も良いですが、ライトアップされた夜もかなりクールな雰囲気なのでオススメ。ガイドブックなどでもあまり紹介されていないのが不思議なくらいです。
ファン・ネレ工場までのアクセス
ロッテルダムを訪れた際はぜひ、近代建築の最高傑作「ファン・ネレ工場」をご覧になってみてくださいね。