現代アート界の巨匠 vol.1:DAMIEN HIRST(ダミアン・ハースト)とは

それほどアートに詳しくなくても、「Damien Hirst(ダミアン・ハースト)」というアーティストの名前を一度は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

コンテンポラリーアート界の第一線で活躍し続けるダミアン・ハーストですが、彼の生み出す作品はどれもインパクト抜群。中でもサメや牛などの動物をホルマリン漬けにした作品は一度見たら忘れられない強烈な印象を与えます。

そんな見る者を惹きつける作品を作り続けるダミアン・ハーストについて今回は詳しく紹介していきたいと思います。

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Damien Hirst という人物について

1965年、イギリス出身。
ブリストルで生まれ、イギリス北部にある都市リーズで育ちました。そして、1986年から89年までの2年間、ロンドン大学のGoldsmiths(ゴールドスミス・カレッジ)にてファインアートを学びました。

90年代から現在まで、アートシーンを牽引し続けるダミアン・ハーストは、2010年のThe Sunday Times(世界最古の日刊高級紙の日曜版)の長者番付で、イギリス人アーティストの中で一番リッチな人物としても紹介されています。その資産額はなんと2億1500万ポンド、日本円に換算すると約315億というとてつもない数字。
ただ、かなりがっぽり稼いでいるようですが、作品制作にかかる費用(アシスタントの人件費・材料費など)も巨額のため、本人曰く稼いでいる数字はもっと低いそうです…
と言っても相当な額ですね。
最近ではアメリカ人アーティスト Jeff Koons(ジェフ・クーンズ)が、人件費削減のためアシスタントを大量に解雇したというニュースが記憶に新しいですが、売れっ子アーティストにも様々な悩みがあるようです。

さて、少し話が逸れてしまいましたが、ダミアンは1990年代のイギリスで頭角を現わしたアーティスト、YBAs: Young British Artists(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)のメンバーの一人です。彼以外の代表的な作家はトレイシー・エミン、レイチェル・ホワイトリード、ダグラス・ゴードン、クリス・オフィリなどが挙げられます。
そして、そんな彼らを支えたのが Charls Saatchi(チャールズ・サーチ)。Saatchi & Saatchi という大手広告代理店社長であり、美術品の超ビックコレクターでもある人物。ロンドンの Saatchi Gallery も有名ですね。
1988年、ゴールドスミス・カレッジ在学中に他の学生たちと共に主催したエキシビジョン「Freeze」をきっかけに、チャールズ・サーチがダミアン・ハーストら若手アーティストを見出しました。2003年に互いの意見にすれ違いが生じ、二人の関係は終わってしまいましたが、チャールズ・サーチ抜きにしてダミアンの成功はありえなかったでしょう。

1993年にイギリス代表アーティストとして出展し、ヴェネツィア・ビエンナーレで発表した作品「Mother and Child, Divided」は高い評価を受け、1995年には世界の美術関係者が注目するイギリス出身アーティストに送られる芸術賞「ターナー賞」を受賞しました。

今では現存するアーティストの中で最も価値のある人物として、イギリスのみならず世界的な人気を誇っています。

「死」を作品のテーマに

そのド派手な見た目ばかりに注目してしまいがちですが、ダミアン・ハーストのメインテーマは「死」。
ただその意味も改めて考えてみると納得できるはず。彼が有名になったのもサメ、羊や牛など動物の死骸を使ったシリーズの作品で、生物の「死」をすぐ連想できますね。

ターナー賞を受賞した作品「Mother and Child, Divided」よりも前、
ダミアン・ハーストの名を世間に知らしめるその先駆けとなったのが、1991年に発表された「The Physical Impossibility of Death in the Mind of Someone Living」というタイガーシャークをホルムアルデヒドに漬けた作品。

現在では「Natural History」というシリーズとしても知られています。ダミアン・ハーストといえばこの青い液体に浸かった動物の作品たちを真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、美術評論家らは当初、彼の作品はステレオタイプであり「死」というテーマに関連性がないようだと批判されることもあったそうです。

しかし、ダミアンは生物とそれを取り囲むホルムアルデヒドは、死と腐敗の過程であると語っています。
ホルムアルデヒドは死んだ生物の保存手段として使用されますが、時間が経つにつれ保存物を変形させ、腐らせていきます。永遠に存在すると思っているものであっても、月日の流れの中で物質はもちろん、私たちの心からもその存在は消え始め、ゆっくりと忘れ去られてやがては消滅する。私たちが彼の作品に対面したとき、作品も私たち自身も「死」に直面し、「死」という消滅に向かっているのではないでしょうか。

その他の代表作や出来事

ダミアン・ハーストは、上記でご紹介したシリーズ以外でも数々の有名な作品を生み出しています。

「Pharmacy」
薬局をイメージしたインスタレーション。

その後もピルなど薬をテーマにした作品は多数存在します。
2007年には6,136個のピルを使った「Lullaby Spring」は、1,920万ドル(約22億円)で販売され、現存するアーティストの中で最も値段の高い作品となりました。

「spin paintings」シリーズ
中心から外側に向かって円心円状に絵の具が飛び散っているようなペインティング。実は彼のアシスタントが制作したというこれらの作品、ダミアン曰く「贋作」だそうです。

「spot painting」シリーズ
ランダムに彩色されたカラフルなドットが印象的な作品。
「spin paintings」シリーズ同様、こちらもアシスタントが制作したと言われています。

ドットで描かれたミッキーのイメージも有名で、タイトルもズバリ「Mickey」です。

「The Death of God」
骸骨一面にダイヤモンドを敷き詰めた作品。1,106.18カラット、実に8,601個ものダイヤモンドを使用し、これだけでも22億円の価値があるそうです…
販売価格は5000万ポンド(約73億円)だったそうですが、さすがにこのプライスでは買い手が付かなかったようです。

「A Thousand Years」
牛の頭とハエをガラスケースに閉じ込めたダミアン・ハースト作品の中で最も挑発的で刺激的なシリーズの一つ。生物のライフサイクルを表現した作品。


その他にも無数の蝶々をコラージュした作品など、どれもインパクト抜群。しかし、一貫して生物の「死」をテーマにしていることがわかります。

また、2008年にSotheby’sで開催された2日間のオークションイベント「Beautiful Inside My Head Forever」も有名です。
一般的にオークションといえばセカンダリー作品が扱われますが、アーティストがオークションハウスで直接新作を、いわゆるプライマリー作品を販売するというなんとも斬新な方法。買い手はエンドユーザーと言われる美術コレクターだけでなく数多くのギャラリーが参加しました。これもダミアン・ハーストだから成せる技ですね。

オークションでは218個もの作品が取引され、その金額は1億1100万ポンド(約163億円)。これは一人のアーティストとしてはSotheby’s歴史上最大で、これまで最も高かった売り上げの10倍以上を記録しました。
ここまでくると金額のケタが違いすぎてよくわからなくなりますね。

そして現在へ

3,000以上のアート作品を所有しているビックコレクターとしても知られる彼は、2015年にそれらのコレクションを発表するためのスペース「Newport Street Gallery」をロンドンにオープンさせました。

そのギャラリーのこけら落としとなったのがダミアンの友人でもあるアメリカ人大御所アーティスト「ジェフ・クーンズ」でした。

そして、2017年4月から、ヴェネツィアにてイタリアでは十数年振りの大規模な展覧会を開催しています。「海」と関わりのある作品が展示され、これまでとはまた一味違うテイストになっています。

詳細はこちらの記事をご覧ください。

2017年4月9日より、イタリアのヴェネツィアにてDamien Hirst(ダミアン・ハースト)のエキシビジョン「TREASURES F...

他の誰にも真似できないスケールの作品を世に生み出し、進化し続けるアーティスト「ダミアン・ハースト」。彼の作品に込められた「死」というテーマに自身も向き合いながら、コインの裏表のような関係にある「生」を体感できるのではないでしょうか。

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