ストリートアーティスト vol. 16「BLEK LE RAT(ブレック・ル・ラット)」とは

今回ご紹介するのはフランス出身のストリートアーティスト「Blek le Rat(ブレック・ル・ラット)」。
Blek le Rat はこれまでお伝えしてきたアーティストたちよりも一つ上の世代ではありますが、彼がこれまでストリートアート界に与えてきた影響力はかなりのもの。あのBanksy(バンクシー)よりもはるか先に、「ネズミ」のイメージを街中に残し、「Father of stencil graffiti(ステンシルグラフィティーの父)」とさえ言われる重鎮でもあります。そんな Blek le Rat とはどんな人物で、現在のストリートアートにどのような影響を与えたのでしょうか。

Blek le Rat と Banksy 、そしてネズミについて

Blek le Rat は、1981年からパリの街中にネズミのステンシル作品をペイントし続けてきました。そもそも何故「ネズミ」がテーマなのかというと、「彼らだけがこの街で唯一の自由を手にしている動物だからだ。」とその理由を語っています。


そして、彼を語る上でどうしても切り離せないのはバンクシーとの関わりについて。Blek le Rat はネズミをモチーフにしたステンシル作品をバンクシーよりもずっと前から描き続けていました。今ではステンシルアートを広めた人物の代名詞といえばバンクシーと考える人は多いですが、本当のパイオニアは Blek le Rat と言っても良いでしょう。

バンクシー自身もそのことについて、
「何かオリジナル作品を作り上げたと思っていても、20年も前に Blek le Rat が自分と同じことをすでにやっていることに気付くんだ。」
と語っています。バンクシーが彼から直接影響を受けたかどうかについては言及していませんが、同じネズミというイメージとステンシルという技法を使っていることからも少なからずインスパイアーされていることは間違いないでしょう。

Blek le Rat はバンクシーについて当初は自身のコピーではないと語っていました。自分は年寄りで彼はまだ青年だし、どこかのアーティストにインスピレーションを与えられていたら喜ばしいこと。60年代にロンドンでロックミュージックのムーブメントが起きた時と似たようなものだとも述べていました。
しかし、Graffiti Wars というドキュメンタリーのインタビューでは、
「バンクシーの作品を見たときすぐに自分のマネをしていると気づき、怒りが湧いてきた。アーティストならオリジナルのテクニックを使わなければいけない。」
とこれまでとは異なるを発言しています。バンクシーが爆発的に知名度を上げスターになっていく姿を見て、嫉妬のような感情も入り混じってしまうのも無理がないかもしれません。ただ、Blek le Rat が「ステンシルグラフィティーの父」というのはまぎれもない事実だということは変わらないでしょう。

Blek le Rat のプロフィール

1951年生まれ、本名は Xavier Prou(ザビエル・プルー)。パリ郊外の街で育ちました。
彼のアーティスト名 Blek le Rat はイタリアのコミックブック「Blek le Roc(原題は Il Grande Blek)」から取ったもので、Rat は「art」のアナグラム(言葉遊び)でもあります。

1971年にアメリカを訪れた際に見た、ニューヨークのグラフィティアートに大きな影響を受けました。しかし、パリとニューヨークでは建築様式や建物の外観が正反対ということもあり、パリの街に溶け込むスタイルを模索する必要があり、そこでたどり着いたのがステンシルという技法でした。

また、カナダ人アーティストRichard Hambleton(リチャード・ハンブルトン)の等身大やそれよりも大きく人物を描くスタイルからも影響を受けています。

その後、数々の作品をストリートに残していきましたが、1991年にカラヴァッジォをモチーフにしたステンシル作品「Madonna and Child」を制作中に警察に捕まってしまいます。この経験から、警察に見つからずにより素早く制作できるようにするため、プレ・ステンシルポスターと呼ばれるあらかじめステンシルを施したポスターを壁などに貼っていくという手法に切り替えていきました。

彼はもちろんアーティストとして高い評価を得ており、世界各地で数多くのエキシビジョンを開催してきました。また、2008年にはロンドンで開かれた the Cans Festival と呼ばれるミューラル(壁画)フェスティバル にも招待されており、このイベントにはバンクシーやDolk(ドルク)といったビックネームも参加しています。

2014年には、Nick Walker(ニック・ウォーカー)やThe London Police(ロンドンポリス)も参加した the Quin hotel のアーティストインレジデンスにも選ばれ、大規模な展覧会も開催しています。このエキシビジョンで発表した作品はthe Quin hotel のパーマネントコレクションとして保存されています。

Blek le Rat は今日の「グラフィティーアート」、そして「ゲリラアート」のムーブメントに多大な影響を与えた人物です。今もなお作品を描き続けるのは、この社会を制圧する大きな力にマイノリティーとして反抗するためでもあります。彼はこれからも私たちの生活に潜在している様々な社会問題を、ストリートから訴え続けていくでしょう。

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