ストリートアーティスト vol.9「JR(ジェイアール)」とは

今回ご紹介するのはフランス人アーティスト「JR(ジェイアール)」です。他のストリートアーティストとの大きな違いは、ペインティングやスプレーではなく写真というメディアを使う点でしょう。これまでパリなどの都市に限らず、アフリカ、インド、パレスチナ、イスラエル、ブラジルなど貧しい地域や戦争などで情勢が不安定な地域、東日本大震災後の日本にも足を運んで作品を残してきました。ニュースだけでは伝わらない、そこに住む人々の本当のストーリーや想いをJRは発信し続けています。

街全体をアートに変えるJRの作品

JRは様々な表情をした人々のモノクロのポートレート写真を大きく引き伸ばしてプリントし、街中に貼り付けていきます。彼の作品は「自由」「限界」「アイデンティティー」「コミットメント」といったテーマが題材になっており、壁、屋根、列車、船など街全体をキャンバスに変えてしまいます。これまでのアーティストたちとは一線を画す、巨大なスケール感を持ったストリートアートを生み出します。

「ストリートが世界で一番大きな美術館だ。」とJR本人が言うように、作品をストリートに残すことによってお金を出して美術館に行かなくても、美術館のない貧しい街でも、誰もがアートに触れることができます。

被写体は現地で生活する人々。人も街も巻き込んで制作して出来上がった作品は、何とも言えぬ説得力とエネルギーを持っています。

表情がダイレクトに写し出されるポートレートだからこそ、より人々は立ち止まり、被写体になった人たちの背景にあるストーリーを思い浮かべ、自然に作品と対話を始めるのかもしれません。

これまでJRは「Face2Face」「Women are Heroes」「Inside Out Project」など、世界各地で大きなプロジェクト行ってきました。
JRはプロジェクトを行う際、現地のコーディネーターなどは基本的には雇わずに顔馴染みの5〜6人のチームで活動を続けています。これまでに行なったプロジェクトについての詳細は、後ほど改めてご紹介します。

JRのプロフィール

1983年、フランス出身。
15歳からグラフィティーを屋上や電車などに残していました。

そして、17歳になる頃、偶然にも1台のカメラをパリの地下鉄で拾います。その後、パリでのグラフィティー活動やヨーロッパ各地を旅して出会ったアーティスティックな人々を撮影した写真のコピーを、「Sidewalk Gallery(歩道のギャラリー)」と題し、パリの街中に貼り付けていくようになります。

2004〜2006年にかけて、パリの若者たちの写真を富裕層が住むエリアに貼り付ける「Portraits of a Generation」と呼ばれるプロジェクトを行います。当初はイリーガルでしたが、彼の活動が評価され、正式なプロジェクトとしてパリ市庁舎の前で作品が展示されることになります。

2007年には友人のマルコとともに、イスラエルとパレスチナを隔てる壁や街中に、巨大な写真を貼り付けました。

Face2Face」と言われるこのプロジェクト、イスラエルにはパレスチナ人のポートレートを、パレスチナにはイスラエル人のポートレイトを貼り付けていきました。そこに存在するのは職種も同じで顔の見分けもつかず、ただ国籍だけが違う人々。JRは両国民に、そして世界に向け「自分たちの中にある偏見をとり除けば、不可能はなく、想像よりもはるか遠くに行けるんだ。」というポジティブなメッセージを投げかけます。

そして、2008年、「Women are Heroes」というプロジェクトでは、発展途上国で起こる戦争や暴力、貧困でまず第一に犠牲となってしまう女性達にスポットを当てます。コミュニティを支える女性たちこそが真のヒーローだと訴えるこの活動を世界各地で行います。

ブラジルにあるジャーナリストやメディアでも立ち入らないようなファベーラ(貧民街)でも女性を主役にした作品を残していきました。それまでこのエリアに足を踏み入れなかったメディアも、この活動をきっかけに街の取材を始めます。アートが生まれづらい発展途上のエリアで、JRは現地の人々と協力してアートを発信していくことに成功します。

その後も、「Wrinkles of the City」というプロジェクトを行うなど、世界各国で精力的に活動していきます。

そして2010年、JRはこれまでの活動を評価され、非営利団体のメディアTED(Technology, Entertainment, Design)の「TED Prize」を受賞します。そして、そこで得た10万ドルの賞金を元に「Inside Out Project」というプロジェクトを立ち上げます。

この「Inside Out Project」は個人が世界に向けてアートを発信するというプロジェクト。参加者は自身で撮影したポートレートをJRのホームページに送り、そのポートレートは後日ポスター作品となって返送されてきます。その作品をそれぞれが好きな場所に展示して、そのコミュニティにアートが生まれていくというコンセプト。

JRはこのプロジェクトを通して東日本大地震の被災地である気仙沼などの地域に訪れています。また、アジア初の「Inside Out Project」展覧会を、東京のワタリウム美術館で開催しました。

プリンター付きの専用トラックで世界各地を訪れ、なんと108カ国、15万人もの参加者を集め大成功を収めるとともに、アーティストとしての評価もさらに高まっていきます。

2014年にはニューヨークバレー団とコラボレーションワークを製作するなど、その活動は多岐に渡ります。

ルーブル美術館のあの有名なピラミッドにもJRらしいインスタレーション作品が登場したことも。

記憶に新しいリオ五輪の際も、オリンピックで盛り上がるリオデジャネイロの街に巨大な作品を残しています。

これまでにロンドンのテート・モダンやパリのポンピドゥセンターでも展覧会を開くなど、ストリートアートという境界線も越えた活躍を見せるJRは、まさにボーダレスなアーティストと言ってよいでしょう。

ストリートアーティストとのコラボレーション

また、JRは様々なストリートアーティストとのコラボレーション作品もこれまでストリートに残しています。

こちらは「Jose Parla」。個人的に彼とJRのコラボは好きなミューラルの一つです。

同じフランス出身のアーティスト「Mr. Andre」や

他にもポルトガル人アーティスト「VHILS」…などなど、JRの写真のイメージとペインティングなどのコラボは、これまでのストリートアートとは一味違ったテイストに。是非これからも色々なアーティストとコラボミューラルを制作し、ストリートアートファンを喜ばせて欲しいですね。

JRは「アートが直接的に物事を変えるわけではないが、アートは物の見方を変え、世界の見方を変える」と語っています。「アートが世界を変える」という壮大なテーマを掲げ、これからもJRは活動していくでしょう。彼の作品がどれだけ世界を変えていくのか、目が離せませんね。

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